正統的なチルデンセーター

2011.04.07

頼もしくも瑞々しいパワーを放つこの服をぜひ着たかったが、タオはサイズが華奢で、残念ながらわたしには似合わなかった。こりっとした少女体型のひとが着たら可愛いだろうな、と思ったが、同い年の小柄な友人は黒一色のトレンチを購入し、ミラノの出張に一緒に行ったとき持ってきていた。全面に細かい刺繍が施されているので皺もあまり気にならず、黒を選んだことで大人っぽく、ミステリアスな雰囲気が漂い、素敵である。とても個性的で主張があるように見えて、日本の女のひとのきれいさを引き出す服だと思った。友人はミーフノのファッション関係者に盛んに褒められ、わたしもちょっと誇らしい気持ちになった。多彩を「華奢」と書いたが、いま、日本で際立っている新しいブランドの特質は、どれも華奢で、独特の少女性を持つ、ということだと思う。長くニットのデザイナーをしていた阿部千登勢さんが一九九九年に立ち上げたサカイも、絶妙な少女性がある。実を言えば、わたしは日本独自のこの少女性というものが、あまり好きではない。が、あるときsacaiの服を見て、少し考えが変わった。それは襟がVに大きく開いたニットで、色はグレー、襟ぐりには朧脂色のラインが人った、一見、正統的なチルデンセーター(テニスやクリケットのときに着るケーブル模様の入ったセーター。テニスプレーヤーのチルデンが着たことから名づけられた)に思えた。でも、よく見る大局の部分が全部開いているのである。そして、細い糸で肩から首にかけて結ぶようになっている。ヨーロッパの伝統的なスポーツウェアの肩を切り開いてしまい、そこに日本の伝統工芸である組紐遣いを思わせるような糸を何本も細かく配したそのセーターは不思議にセクシーで、それを着ていたのが年上の女性であったこともあり、以来、気になるブランドのひとつになった。